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運動前のストレッチをしてはいけない!?果たして真相は!


(インタビュアー小川)●剱持さんは大学でトレーナー志望の学生向けに
授業を教えているということですが、運動前のストレッチをする目的ってなんですか?


(剱持さん)主な目的はケガ予防と運動パフォーマンスの向上です。
ストレッチには大きく分けて、静的ストレッチと動的ストレッチの2つの種類があります。


文字通り、
静的ストレッチは反動をつけないでじっくり筋肉を伸ばすストレッチ、
動的ストレッチは動きながら反動をつけて行うストレッチです。


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●動的ストレッチは、サッカーではブラジル体操って言われますよね。


そうですね。皆さんが知っている代表的な動的ストレッチがブラジル体操ではないでしょうか。
動的ストレッチは、主にウォーミングアップ等の動きの事前準備の段階で筋肉に刺激を入れるために行います。

静的ストレッチは、筋肉の柔軟性を高めて、カラダの可動域を広げるために行います。
また、血行循環をスムーズにすることで、疲労回復にもつながります。


実は、近年
運動前に静的ストレッチをすると
運動パフォーマンスが下がると言われていたりするんです。


●そうなんですか??


ストレッチが運動パフォーマンスに及ぼす即時効果を検討している研究の中で、
静的ストレッチ後に運動パフォーマンスが下がったといういくつかの結果がでていたりします。


●静的ストレッチがパフォーマンスを下げてしまう理由ってなんですか?


スポーツ2


簡単に言うと、静的ストレッチをするとカラダがリラックスしてしまうんです。
運動直前なのにリラックスしすぎてしてしまうことは、
運動するためにカラダが十分な準備状態ができていないという状態ですよね。


●では、運動前は、静的ストレッチはしないほうが良いということですか?


私は、一概にそういう結論に結びつけてしまうのは危険だと思っています。


例えば、研究結果は事実ですが、結果だけではなく、
それらの研究で用いられているストレッチングの強度や時間は、
実際のスポーツ活動で利用されている強度や時間よりも強かったり、
長かったりしているものもあります。


実際の現場では、局所の筋肉を長い時間ストレッチをすることはほとんどないと思いますし、
ストレッチ直後にいきなり動き出す場面もほとんどありません。

もちろん、運動の内容や競技種目によって変わりますが、静的ストレッチをしたとしても、
その後に準備運動を入れてから、主運動や試合をすることがほとんどです。


研究結果だけをそのまま鵜呑みにして、実践したり、現場に落とし込んだりするのではなく、
科学的な情報と実際の現場の状況を踏まえて

「より良くするためにはベストはなんだろう?」

を考えることが大事だと思っています。


一番恐いのは、
研究結果だけ伝わってしまい、


「運動前は静的ストレッチは良くない」


ということだけ広まってしまうことです。


スポーツ3


忘れてはいけないのは、静的ストレッチの主目的は、筋肉の柔軟性を高めて、
カラダの可動域を広げるためです。
筋肉が硬くなっている場合、柔軟性を改善するために静的ストレッチは効果的です。


私は、静的ストレッチや動的ストレッチが良いとか悪いからやった方がいい、
やらない方がいいという視点ではなく、それぞれに、しっかりとした目的と効果があるので、
選択して利用する側が目的に応じて使い分けることが重要だと考えています。


そういうことを考えていくと
ストレッチ1つにしても本当に奥が深くて考えて行くと面白いですよ。


●なるほどですね。それを子供たちが聞いたら、鵜呑みにしてしまうのは恐いですね。
剱持さんにとって、運動前のストレッチ方法に関してベストはなんだと思いますか?


現時点で私がベストだと思う運動前のストレッチ方法として考えているのは、
チーム練習等で運動前に時間の余裕があるなら、静的ストレッチを行い、可動域を広げ、
それから運動の事前準備ということ動的ストレッチで筋肉に対して刺激を入れます。


もし、チーム練習等で時間に余裕がない場合は、動的ストレッチだけ行うようにします。
ただし、理想はセルフで静的ストレッチを行うように促します。


基本的には、運動前に2種類のストレッチを目的を分けてやります。
どちらかしか選ぶような時間がない場合であれば、運動前は動的ストレッチを選ぶということですね。


●今回のお話もそうですが、ストレッチの正しい知識を知る機会って
少ないですもんね。


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私もそう思います。
ストレッチが日本に入ってきて40年くらいですが、ストレッチと聞くと今では
ほとんどの人が知っていて、やったことがある人が多いとは思います。
でも、実際は時間や頻度、タイミング、組み合わせなどその他でもまだまだわからないことも多くあります。


私は今、学生と共にトレーナー実習に行って高校生の年代に関わることがありますが、
ストレッチの時間はあまり十分に取られてない印象を受けています。


ストレッチによってどれだけ運動パフォーマンスがアップしたか、怪我が予防できたのかなどは、
実際の効果は目に見えにくいのが事実です。


スポーツ5


また、限られた練習時間の中で、優先順位を考えるとストレッチに
時間を割きにくいということもあるようです。
私が関わることで、チーム関係者や選手にストレッチの目的と効果をしっかり伝えていきたいと思います。


●スポーツ後もストレッチはしたほうが良いですか?


したほうが良いですね。
運動後は静的ストレッチがお勧めです。


●なぜ静的ストレッチなんですか?そして運動後にストレッチをしないと
どんなデメリットがありますか?


スポーツをしているときは、身体に対して負担が大きく、スポーツ後、筋肉は硬く縮まってしまっています。
そのため、運動後のストレッチによって、それを伸ばすことが大事なんです。この積み重ねがケガ予防につながります。


人間のカラダって、意識的に伸ばそうと思わないと、しっかりとストレッチして効果を出すことが難しいと思うんです。


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●なるほど。
これはストレッチから少し外れてしまうのですが、
スポーツで成果を出す人はどんな人ですか?


あくまで、私の経験でのお話ですが、
まず、自分のカラダを自分で知っている人です。
カラダの動かし方。強み・弱点を両方知っているということですね。


そして、自己管理能力がある人です。
ただ、カラダを人任せにするのではなく、できることは自分から試してみようと思って動ける人ですね。


あとは、素直さですね。人からのアドバイスや、自分が良いと思ったことは
とにかく1度やってみるという素直さを持っている人です。


自分にとって、良いのか悪いのか、合うか合わないかは実際にやってみないと
わからないですから。


そして、最後に「継続できる」ということです。
どんなに良いストレッチ、トレーニングがあったとしても定期的に継続していかなければ
効果がでることはないので、やはり何をするにしても自分自身で
目的意識を持って継続することが大切だと思います。


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インタビュアー:小川敬司
撮影:平田ちか

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帝京大学医療技術学部 柔道整復学科助教
剱持 佑起(けんもち ゆうき)

国際武道大学体育学部スポーツトレーナー学科を卒業後、
国際武道大学大学院武道・スポーツ研究科武道・スポーツ専攻を経て、 同大学の研究支援センターの非常勤職員となり、
トレーナー教育、コンディショニングに関する研究活動の
経験を積む。
現在は、帝京大学医療技術学部柔道整復学科で主にトレーナー課程を担当し、 トレーナー教育に携わっている。
その他、課外で学生支援のためのセミナーや講演会を主催するなど 精力的な活動は範囲が広い。

専門分野は、
アスレティックトレーニング、コンディショニング科学。

情報

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