疲労回復には「じっくりストレッチ」、痛みには「こま目なストレッチ」ってどういうこと?
(インタビュアー小川)●ストレッチは疲労回復に効果があると聞きますが、
なぜですか?
(丸山さん)ストレッチをすると疲労が回復するというわけではないと思います。
ストレッチをして疲労が回復したと感じるのは、
ストレッチによって自律神経のバランスが改善した場合でしょう。
疲労は自律神経と密接な関係があります。
慢性的な疲労は、たっぷり睡眠をとっても、休暇をとっても、
疲れが抜けない状態ですよね。
全てではないと思いますが、そのような疲れがなかなか取れない方の多くは、
交感神経が優位になってることが多いのです。
セルフストレッチでも正しいやり方で行えば、心地良い刺激を与えることができます。
心地よい刺激は副交感神経を優位にします。つまり、自立神経のバランスを整えることにつながります。
ストレッチが疲労回復につながる場合というのは、これが一番の理由でしょう。
●血行が良くなるというのは関係ありますか?
もちろん多少はあると思いますが、血行を良くするならカラダを温めるのが一番です。
それなら同じ時間行うにしてもストレッチよりも入浴していただくほうがずっと効果的です。
ストレッチならではの疲労回復効果は、自律神経を整えられるという点だと思います。
日々の生活の中で心身のストレスを多く受けている状態が続くと自律神経が乱れ、
カラダは慢性的な疲労が抜けにくくなります。
ストレッチにはリラクセーション効果もあると言われていますが、まさにその通りです。
例えば夜寝る前にストレッチをすることを習慣化すれば、
質の高い睡眠につながる手助けとなります。
様々な原因があるとは思いますが、自律神経の乱れは不眠の主な原因の一つです。
●セルフストレッチを習慣にすることが良いということですが、
効果的なストレッチのポイントなどありますか?
実は、とっておきのポイントがあるんです。
まずは目的をはっきりさせましょう。
リラックスを促すためのストレッチは10~15分かけて深呼吸をしながらじっくりと行います。
「イタキモチイイ」程度の刺激でじっくりと行うのがポイントです。
柔軟性を改善させるためのストレッチは、行う「方法」はもちろん大切ですが、
肝心なのは「時間」ではなくて、大切なのは「頻度」です。
時間をかけてじっくりやれば良いというものではありません。
一度に10分間やるよりも、1分間を3回、時間を分けてやるほうが効果的なんですよ。
●え~!それは初めて聞きました。
科学的根拠が出ているわけではないのですが、
私が治療現場で患者さんを診てきた経験として、確信を持っています。
これまで例外はありませんでした。
●そこまで確信を持って言えるのはすごいですね。
たしかに一部の筋肉を伸ばすだけなら、そんなに時間は必要ありませんもんね。
そうなんです、1分でもokです。
当院ではそういった正しいセルフケア、
簡単で継続しやすいセルフケアに重きをおいて、お伝えしています。
●患者さんに、セルフストレッチについてどのように教えていますか?
肩こりとか、関節可動域を広げたいといったニーズの場合は、
1日の回数を細かく振り分けるようにお伝えしています。
慢性疲労とか体質改善など、
どちらかというとソフト面にアプローチするべき場合は、
寝る前に時間をかけて、心地良い時間を増やすようなストレッチをレクチャーしています。
●なるほど、局部の症状に対しては、こま目なストレッチを、
リラックス効果を求めるならじっくり時間をかけてのストレッチを、ということですね。
ストレッチにはリラクセーション効果もあるんですね。
はい、あると思います。
●ちょっと根本的なご質問なのですが、
そもそもカラダが硬いというのは、なぜ良くないんですか?
そして、硬いという基準はどこにあるのでしょうか?
体が硬い=悪い、ということではないのです。
いい硬さ、と、悪い硬さがあります。
どこに差があるかといいますと、基本姿勢が取れるかどうかです。
例えば、猫背になってしまったり姿勢が悪かったりするような硬さは良くない硬さです。
基本姿勢がしっかり取れるのなら、硬くても問題ないということです。
逆に、これはあまり認識がないと思いますが、
「柔らかすぎる」といった状態のほうが問題です。
こちらのほうが、治療が難しいんです。
●なんで柔らかすぎると良くないんですか?
関節には、適切な可動域というものがあります。
適切な可動域以上に動いてしまうと、カラダに負担がかかってしまいます。
その結果、痛みが出てしまいます。
こういった方は、
マッサージしても、ストレッチをしても良くならないというケースが多いです。
●そういった方に対しては、どういった対処をされるんですか?
カラダが硬い患者さんとは逆に、関節を硬くさせていきます。
硬くするというと語弊があるかもしれませんが、イメージとして体を「カチッ」とさせていく治療です。
筋肉を鍛えたり、正しい可動域の動作を覚えさせるようなトレーニングをしていきます。
●柔らかければいいということではないんですね。
これは新しい気づきです。
そうなんです。
「基本姿勢をしっかり取れるか」
という部分がとても大事なんです。
インタビュアー:小川敬司
撮影:濱高尚人
場所:肩こり研究所
五本木肩こり研究所 所長
丸山 太地(まるやま たいち)
日本大学文理学部体育学科にてスポーツ医学を学び、在学中より
トレーナーとして活動。
平成18年に卒業後、東京医療専門学校にて国家資格を取得。
その後、上海中医薬大学への短期留学し、解剖学実習修了。
帰国後、日本大学医学部、千葉大学医学部の解剖学教室にて解剖学実習修了。
学生時より行っているトレーナー活動で培った「動作分析」と
「体造り」のノウハウと鍼灸マッサージ治療を融合させることで、
プロアスリートや芸能人など結果を求める方からの支持も得る。
2012年に独立し、五本木肩こり研究所を開設。
根本原因へ対処する治療をモットーとし活躍中。
情報
五本木肩こり研究所HP
http://gohongi-katakori.com/
丸山太地さんtwitter
https://twitter.com/maruyamataichi